「下手でもそれが個性だ!」と開き直って歌いはじめたものの、何年後かには行き詰まった。
このまま歌い続けても先が見えている気がして、やる気がなくなった。
「何をしたかったんだっけ?」
一度立ち止まり、自分を顧みた。そして本心に気付いた。
「俺、歌が好きなんだ!」
歌には劣等感しかなかったので、これに気付いた時は自分でもビックリした。
しかし思い返せば、中学生の頃出会ったサザンオールスターズからはじまって、心の底から感動してきた音楽は、とにかく魅力的で圧倒的な歌声ありきだった。
youtu.be
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なのに、いざ自分がそんな声で歌うことなんて、無理すぎて最初から無意識で諦めていたことに、この時はじめて気付いた。
「桑田佳祐は喉が違う」「あの声は黒人だから出せるんだ」
果たして本当なのだろうか?試したこともないのに。
ただただ好きだからやっている音楽なのに、本当に好きなことを、最初からできないと諦めて見て見ぬふりをするのは、なんか違うと思った。
「俺にも、聞いたら無条件で鳥肌立っちゃうような、圧倒的な歌声を出せるのだろうか?」
歌に劣等感しか持っていない自分にとっては、恐ろしく大胆な問いかけだ。
実際考えるだけで怖かった。
しかしよく考えたら、そもそも失うものは何もなかった。
「どこまでいけるかはわからない。今すぐには無理だろう。でも30年後、異様に歌のうまいおじさんになっていたら素敵じゃないか」
そんな可能性にかけて、自分の歌声の探究をはじめたのが20代前半の頃だ。
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