「弾き語りをはじめたい」という人にギターを教える機会があった。
「弾き方がわからない」というのだが、どこが、どうわからないのかが、なかなかわからなくて難儀した。
弾き語りなんて「コードとメロディさえわかれば、あとは適当に弾けばいい」くらいの認識だったのだが、「あとは適当に」の部分が肝心のわからない部分で、どの弦を、どの順番で、どの指で、どう弾くか、1から順に、具体的に伝える必要があることがわかってきた。
無意識にやっている事を言語化して人に伝える難しさと楽しさを、逆に教わった。
顧みると、ギターは、弾き始めた時から何故か弾けた。
一方歌は、物心ついた時から、何故か苦手意識しかなかった。
でもある時、それ以上に歌うことが好きだと気付いたので、歌いはじめた。
歌いはじめたものの、自分の声に劣等感しかないし、伸ばすべき個性も一切見つからない。
だからボイトレしようにも「いい声を出す」ではなく「悪い声を出さない」ことによって、自分の中にあるはずの「未知のいい声」を浮き彫りにする、という方法論しかなかった。
「さっきより響いているか否か」「さっきより楽か否か」という、自分の体の中にある、疑いようのないと思われる感覚だけを頼りに、試行錯誤を重ねた。
その試行錯誤の折々で見つけた発声法、というか試行錯誤のやり方、試行錯誤そのものを、「鳩山メソッド」と呼んでいる。
才能がゼロなので「なんとなく」声を出す自信が一切なかった。
だから間違いようのない体感だけを頼りに、1から手探りで、自分で、自分に、声の出し方を教えてきた。
手間はかかる分、気づきも多かったし、今となれば、そこに価値があるんじゃなかろうかと思っている。
鳩山メソッドは声の出し方のハウツーでもあるんだけど、それ以上に、声の出し方のハウツーを自分で見つけるためのハウツーだ。
ハウツーもさることながら、それを自分で見つけること自体の楽しさと、見つけたときの喜びの経験を共有したい。
鳩山が鳩山に教える発声法だから「鳩山メソッド」だけど、鳩山メソッドを通して、小沢メソッドなり、管メソッドなり、各々が、各々の発声法を見つけていってくれたらいいなーと思っている。
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