整体を受けた記

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というわけで山梨で一軒だけ、という野口整体の先生に、身体を診てもらった。果たして、ちょっと人生が変わるような体験だった。
一時間でここまで身体が変わるのかとびっくりした。身体を診ただけでここまでわかるとは。プロの目の鋭さは、想像をはるかに超えていた。今まで素人なりに、心身の分かち難さを面白がっていたが、ほんとうに浅瀬で遊んでたに過ぎないと気付かされた。身体って面白い。
開始早々、身体をちょっと見ただけで我が性格をズバッと言い当てられた。自分でも持て余している性分まで、ひょっとして俺より詳しい?ってくらい断言され、またそれがいちいち納得できるので、ぐうの音も出ない。さらに身体をちょっと触っただけで、最近の心身の不調を、見てたとしか思えないくらい的確に言い当てられて、もう、笑うしかなかった。
体量配分計の結果も大変興味深かった。色んなことがわかったようだが、個人的にはリラックスする時と緊張する時の重心の位置が普通の逆、という結果が印象に残った。最近、やりたいことと行動が裏腹で疲れてばかりいる気がしていたのだが、それが如実に身体に現れているようで、これまた笑うしかなかった。
無駄とわかっていながら、認知症の祖母に梅干を叩きつけたくなる位イライラが抑えられない時があったのだが、その原因を「疲れているから」と言ってもらえた安堵感。当人は深刻に感じている心の問題の原因が、単純に身体の不調にあるとしたら、こんなバカバカしいと同時に、こんな救いはない。心はいじりようがないが、身体ならいじれる。
というわけでいじってもらった。わかってもらえているという感覚に大変心強さを覚え、施術前には俎板の鯉でどうとでもしてくださいって感じだった。
手首足首、首、わきの下、肩など、押したり引いたり、色々された。痛さはなかった。マッサージでもストレッチでもないさりげない当たりなんだけど、ぐっと力を入れて、パッと緩めるリズムが気持ちよかった。
あっという間に一時間ほどの施術が終わった。あっけないようだった。
早速帰ってじっくり身体の変化を確かめよう思っていたら、「帰る前に待合室で休んでいってもいい」と言われたので、そうすることにした。
待合室で寝転んでみて早々、明らかなビフォーアフターに「おやおやっ!?」となった。ものすごく呼吸が深い。息が底の底まで吐ききれて、身体の隅々まで入ってくる。これまで身体の中がガチャガチャして完全に吐ききれなかった息が、何の邪魔もなく最後まで吐ききれる。え?まだ?まだ吐けるの?どこまで行くの?って感じ。そして深く吐ききった後に訪れる身体の中の静けさ!30年以上生きてきて初めて訪れる場所だった。今までの呼吸は何だったんだと思った。これが普通の状態だとしたら、今までの普通は地獄ではないか。来てよかったと心の底から、というか、身体の底から感じた次第。
家に帰り、指示に従い飯と風呂を避け、早めに床につき、存分に深い呼吸と身体お新しいバランスを楽しんだ。身体中に施術の余韻が残っており、未だ見えない手で施術されているような感覚だった。しばらくすると肩がぴくぴく動いたり、右脚が立ったり倒れたりしだした。それを面白く眺めているうちに、あくびがいっぱいではじめ、気付いたら寝ていた。

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