「息を吸う感覚で声を出す」自体は随分以前からやっていた。しかし意味合いとしては、息を長く吐くためのものだった。吸う力と吐く力を拮抗させて、息を細く長く吐く、という理屈だ。
しかしこの「吸う感覚で歌う」方法が、喉を痛めない発声法のカギでもあったことには、今になって気づいた。
喉を楽にしたまま声が出せるので、高い音域を開発していくためのカギにもなる。
やり方がわかれば、練習方法も自ずとわかる。
吸う感覚さえ感じられればいいので、ハミングで練習することにした。場所を選ばないし、喉も消耗しない。
ハミングで吸う感覚で声を出すと、うなじあたりに声が響くというか、力が集まるというか、意識がいく。
よくボイトレ本に書かれていた練習法「ハミングをうなじに響かす」とはこれだったのか、と今さら気付いた。
「ハミングをうなじに響かす」の大事さはわかっていたつもりだったが、わかってなかった。わかってないことが、わかってなかった。
確かにこの練習法なら効率よく、喉の奥を開けられるようになる。上達の近道だろう。
しかし「ハミングをうなじに響かす」とだけ説明されて、この感覚を掴める初心者なんているのだろうかと、自分を顧みて思う。
結局上達の最短距離は、その感覚をわかっている人に直接教わることではなかろうか。独学二十年目にしてそんな結論に達した。
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